日本の就活はなぜこんなに苦しいのか? 諸外国と比較して分かった独特のキャリアプランニング |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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日本の就活はなぜこんなに苦しいのか? 諸外国と比較して分かった独特のキャリアプランニング

日本の就職活動、採用方式の「変」なところ

●欧米諸国の価値観の根源にあるもの

 一つは、欧米諸国というのは、れっきとした階級・階層社会だからである。「階層文化」というものが、家族や職場を基盤として強固に形成され、それが、職業や仕事の世界に明瞭な「仕切り」を入れているのである。
 例えば、労働者階級の家庭の子どもは、少年期くらいまでは、「自分は将来、社長になるのだ」といった夢を語っていたかもしれない。しかし、彼らは青年期以降になれば、小さい頃から親の職業を通じて馴染んできたブルーカラーの仕事に、自ら就いていくことになるのが圧倒的である。

 逆に、上流階級の家庭の子どもは、幼い時には、「自動車メーカに入って、将来は、車の組み立てをしたい」といった夢を語っていたかもしれない。しかし、青年期以降には、彼らは大学進学も果たし、最終的にはホワイトカラーの職種に就いていくのだろう。
 こうした階層社会の仕組みが作動しているとすれば、一定の年齢段階以降の若者にとっては、夢がそれほどの訴求力を持たなくなることが頷けるのではないか。

 二つめには、欧米における労働者の採用は、たとえそれが新卒者の採用であったとしても、ジョブ(仕事)ごとに、そのジョブを遂行できるだけの職業能力を身につけているか否かで判断されるという事情があるからである。
 同世代の若者のうち、大学に進学する三割程度の者は別として、残りの七割の若者は、後期中等教育(日本で言えば、高校)の段階には、特定の職業教育や訓練を受けている必要があるのである。そうでなくては、彼らは卒業後に就職口にはありつけないからである。

 そうだとすれば、彼らにとって、青年期以降の時期は「夢」だの「やりたいこと」だのと言っている場合ではないのだ。自分が選んだ職業教育・訓練のコースに、全力で取り組むしかない。
 大学に進学する場合には、時間的には少し余裕ができる。しかし、大卒者の場合にも、ジョブ(仕事)を遂行する能力で採用されるという原則に変わりはなく、同時に、大学の専門学部は、特定の職業分野や職種と密接に結びついてもいる。だから、ここでも、日本の大学生がするような意味での「やりたいこと」探しなどをしている余裕はないし、そんなことをしても意味がないのである。

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児美川 孝一郎

こみかわ こういちろう

1963年東京都の生まれ。東京大学教育学部、同大学院教育学研究科博士課程を経て、96年より法政大学に勤務。2003年よりキャリアデザイン学部助教授、07年より同教授(現職)。専攻は、教育学(青年期教育,キャリア教育)。日本教育学会理事、日本キャリアデザイン学会副会長。主な著書に『若者とアイデンティティ』(法政大学出版局)、『「親活」の非ススメ』(徳間書店)、『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、『まず教育論から変えよう』(太郎次郎社エディタス)等がある。


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